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take a breather

第20章 I seek

タクシーに乗って行き先をドライバーさんに告げる

「楽しみだなぁ…大野さん行きつけの店」

翔くんはニコニコしてて、本当に楽しそうだ

店に着くと奥の座敷に通された
ひとりで来る時はカウンターに座るんだけど
今日は翔くんとゆっくり話したいから個室をお願いしておいた

とりあえずのビールを頼み、数点の料理をオーダーする

「じゃあ、お疲れさま」

「お疲れさま」

翔くんとビールジャッキをカチンと合わせ
ゴクゴクと一気に流し込む

「はぁ〜うまっ!」

「幸せ感じるよねぇ、仕事終わりの一杯って」

「うん、めっちゃ感じる」

「それにしてもいいお店知ってるね
しっとりとした雰囲気で落ち着く」

「だろ?料理も旨いから期待してて
翔くんをガッカリさせるような事はないと思うよ?」

「うんっ。期待してる
けど、ガッカリする事はないよ
大野さんに誘って貰えただけで十分」

「そんなに喜んで貰えるとは思ってなかったなぁ」

「だって、初めてだよ?
ふたりで飲みに来るなんて…
他の人とは行ってるのに
俺だけ行ってないから
俺、大野さんに嫌われてるのかと思ってた」

少し哀しげな表情をする翔くん

「そんな訳ないだろ?
他の人は、みんな向こうから誘って来たから行っただけで
翔くんが誘ってくれたら、翔くんとも行ってたよ」

「ほんとっ?」

「ホントホント」

「よかった…」

「そもそも翔くんのこと嫌う筈ないじゃん
翔くんがいなかったら
俺、リーダーとしてやってこれなかったもん」

「またまたぁ、最近の大野さんは口が上手すぎる
どうしちゃったのよ」

なんて言いながらも照れ臭そうに笑ってるんだから
悪い気はしてないってことだよね?

「ホントのことだよ?
今の俺があるのは、翔くんのお陰…
翔くんと一緒にグループ組めて
本当に良かった」

翔くんを見つめながらそう思いを伝えると
翔くんから笑顔が消え、俺を凝視した

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