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a faint

第2章 white-night obsession


white-night

『Masquerade night』

そう銘打った今宵の乱痴気騒ぎは 至ってお気に召さなかったらしい。

煌(きら)びやかなスワロフスキーで彩られたハーフ仮面(マスク)は 床に叩きつけられた挙げ句 ピンヒールでこれでもかと云わんばかりに踏みつけられて木っ端微塵。

艶々したウィッグを 忌々しげに毟り取ると 放り込んだゴミ箱諸共 壁際まで蹴っ飛ばす。

お人形さんのご機嫌は ななめどころか 垂直落下。

それというのもギャルソンの不手際の尻拭いを 俺の出番を割愛するコトでチャラにしたエニグマのせいだ …おそらく。

お気に入りの猫足カウチにドカッと腰を下ろし 足を押っ開げて 普段は滅多に吸わない安っぽい紙巻タバコを口に咥える。

「……マジック見たかったのに」

口唇をツンと尖らせ 幼稚な駄々に相反して 怒髪は天を衝いたままで 怒(いか)りは継続中。

据わった目でこっちをじっと睨(ね)めつけ 咥えタバコの先をピコピコ上下させてるのは 火の催促。

機嫌取りをする訳では無いが この後 楽しみたいコチラとしては 今 逆らうのは得策ではない。

メインディッシュは美味しくがモットー。

臭いメシは御免蒙(こうむ)る。

火を灯したライターをタバコの先に寄せてやると 小首を傾げ 伸ばした人差し指で俺の顎先を掬(すく)うと

「………望む通りに抱かれてあげる」

蜂蜜を垂らした様な トロリと濡れた甘ったるい流し目。

「手加減するな」

蓮っ葉な物言いは挑戦的……いや 好戦的か。

細い腰に腕を回して

”……どうされたい?”

その目を覗き込む。

紅くテラテラと艷めく口唇を 思わせぶりに舐める仕草は天性か 魔性か。

「どうもこうも……のめり込ませてみろよ」

中指を立てて 更なる挑発。

舌舐めずれば 口唇に喰らいついてくるその獰猛さに 堪らず笑ってしまう。

面白い、欲が滾(たぎ)る

どうせ お互い つまらない夜になったんだ、受けてたってやる。

落ちた吸殻 散った白い灰 シャンパンゴールドのつま先。

豪奢なレースを脱ぎ捨て 剥き身の肌をさらけ出せ。

幻惑と幻想のイリュージョン、官能(エクスタシー)と絶頂(クライマックス)の極みを駆け上がれ。

欺瞞と欲望に満ちる歪曲(わいきょく)した夜に 嬌声を放て。

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