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すぐそばにいる君を

第2章 数々の苦難

「失礼します」
決まった挨拶をし、扉をガラガラと開く。

「おお、横瀬こっちだ!」
手を上げて合図をする担任を目印に近づいていくとすでに村中は来ていたようで無表情のまま私を見ていた。
「二人を呼んだのは、体育祭を仕切って欲しいと思ったんだ」
「はあー…」
何を言い出したのか一瞬理解できなくて、軽い返事を出してしまった。
「おお、横瀬はしてくれるか!?ありがたいな。で?村中はどうだ?」
担任の次の言葉で我に返り私が行った言葉を思い返すと、思わず大声が出ていた。
「俺は…」
「えええええ!?」
思わず出た言葉が職員室中に響き周りの教師が目線を送ってくる。
「いやいやいや、先生。私にはそんな大それたことは!!」
「何を言っている。今、はい。と言ったばかりだろ?」
「あれは、物の弾みというか…なんというか……」
「少し準備をしてくれればそれでいいんだ。ほら、クラスに去年お前達と同じ役目を果たしたのがいるだろ?そいつらに聞いたら大したことないからな、よろしくな」
にこやかに話す担任は簡単だというが、何を根拠に言っているのかわからない。
もう用は済んだという風に机に並べられた物たちを整理し始めていた。
とりあえず授業が始まりそうと、職員室を出て最近癖になっているため息がまた出た。
その側で村中は何事もなかったように私の横を通り過ぎ、教室へ向かうようにして歩き出した。

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