
俊光と菜子のホントの関係
第9章 『勝手にジェラシってる』
「――あ、そうだ。オレさ、明里から聞いたんだけど、菜子ちゃんってあのダンスグループの新曲が好きなんだって?」
「うんっ」
「実はこの間、それをダウンロードしたんだ。良かったら一緒に聴いてみない?」
「わぁー、聴きたい聴きたいっ」
「じゃあちょっと待ってて。今出すから」
晃君はスマホを取り出して操作しだした。
嬉しー。聴きたかったんだー、あの曲。
ルンルンしながら周りを見渡すと――
あれっ? あの、斜め向かいで背を向けて立っているのって……
やっぱり、俊光君だぁ!
昔から見てきたカッコいい横顔……うん、間違いないっ。
なんだぁ、電車一緒だったんだ。全然気づけなかったよー。
人が多めで声を上げるわけにもいかないから、自然とこっちに気づいたりしないかなぁー……。
けど俊光君は、窓の外の景色を真っ直ぐに眺めているから、顔すら全く動いてくんない。
やがて、次の駅に着いた。
あ、俊光君と智樹さんの通っていた高校の最寄り駅だ。
一気に乗客が降りたと思ったら、同じぐらいの乗客が乗ってきた。
それに混じって高校の生徒……すなわち、俊光君と智樹さんの後輩さん達も乗ってくる。
にしても俊光君、全然こっち見ないなぁー……て思ってたら、
「あ、あのっ……池崎先輩、ですよね?」
へ? 池崎先輩?
そう言って俊光君の右隣に来たのは、高校の女子生徒さんだった。
俊光君が反応してその人を見るなり、パッと表情を柔らかくした。
んん? 何その顔……。なんかモヤっとしたんですけどぉ……。
