
俊光と菜子のホントの関係
第9章 『勝手にジェラシってる』
「――へぇ。じゃあ、あそこの女子短大を受験するのか?」
「そうなんです。栄養士になりたくて……」
「あーなるほど。だからクッキーも上手だったんだな」
「お……覚えててくれてたんですか?」
「当たり前だろ。うまかったし、妹にもあげたら喜んでたしで」
「そう言ってもらえると嬉しいです。ありがとうございます」
俺が高校二年生の時に、お情けでクッキーをくれた後輩のコ。
あれがきっかけで、見かける度に話すようになったんだっけ。
そういえば、俺が卒業した時も別れを惜しんで泣いてくれたりもしてさ……ホント、いいコだよな。
「今、勉強とか大詰めの時期だろ?」
「はい。もう、本番まで気が気じゃありません。受かるかどうか不安で……」
「あーわかる。俺もそうだった。
けど先生が『自分が積み重ねてやってきたことを信じろ。大丈夫だ』って言ってくれてさ。それでリラックスして、受験に挑(のぞ)むことが出来たんだよなー」
「……そうかぁ……そうですよね。わたしも今の言葉を聞いたら、なんだか大丈夫な気がしてきました」
後輩のコは、性格どおりの大人しく控えめな笑みを浮かべた。
後輩がこうして話かけてくれるのって、結構嬉しかったりするもんだな。
