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俊光と菜子のホントの関係

第14章 『俊光君への兄(本命)チョコ』


「え、えへへー……そんなに顔に出てた?」

「うん、出まくり」

「……明里ぃ、」

「うん?」

「私……今年のバレンタインで最後にする。
 俊光君に、密かに本命チョコとしてあげるのを……」


 うん……そうだよね。

 今年『から』やめるんじゃなくて、今年『で』終わりにしよう。

 そしたら来年こそは、ちゃんと兄チョコとして渡そう……。


「そっかぁ……。よーっし! そしたら気合い入れなきゃね!」

「……うんっ」


 明里は、『ダメ』とも『そうじゃないでしょ』とも何も言わず、気持ちを汲み取ってくれただけじゃなく、私の落ち込みがちな気分まで上げようとしてくれた。

 こういう明里だから、安心して親友でいられるんだよね。


「したらさー……あっ。コレなんてどう?」


 チョコがたくさん並ぶ中で明里が手にしたのは――商品のポップに『今年のイチオシ本命チョコ』と謳っている、見るからに他のチョコよりも上めの雰囲気を醸し出してる物だった。

 かんざしか何かが入ってそうな細長い黒の小箱。中身がわかる見本を見ると、丸っこくてコロコロとした、一口サイズの濃い赤色のハートが五個、横に並んで入ってる。なるほど、ラズベリーのチョコだから赤いんだ。表面もツヤツヤピカピカしてて。まるで宝石みたーい。


「でも、明里……。これじゃあモロ本命だってバレちゃわない? こんなキレイな赤いハートって、いかにも『ラブ!』って感じがするじゃん」


 それに加えて……そんなチョコだからなんだろうね。五個しか入ってないのに、なんと野口さんが二枚も必要。おこづかい制の私からしたら、『ひゃーっ!』って叫んじゃうぐらいお高く思えちゃう。

 見た目も値段も、私にとっては『ザ・本命』だよー。


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