
俊光と菜子のホントの関係
第4章 『私と俊光君』
「…………してっ」
「あ?」
「取り消してよっ……! 今、俊光君に対して言ったこと、全部っ!」
私は怒りで震えながらも、声を絞り出した。
「はっ。なーんで取り消さなきゃなんねぇんだよっ。ホントのことだしー」
「ーーーーっ!」
今の一言で、私もう――プッチーンときちゃった!
「取り消してってぇ…………言ってんのよぉーーっ!」
握った拳を、山田の顔面目掛けて――
バキィッ……! とした。
「だっ!」
山田はその衝撃で床に倒れ込んだ。
私は山田を――右ストレートで殴ってやった。
「ちょっ……菜子ぉっ!」
殴った瞬間を目の当たりにしちゃった明里が、顔色を青くして叫んだら、クラス中が一気に静まったのがわかった。
「はぁっ、はぁっ……」
息を切らしながら、山田を見た。殴った口の端が血で滲んでいる。
それでも、これっぽっちも悪いなんて思わないから。むしろ私、『やってやった』って勝ち誇ってるもん。
「俊光君に言ったこと、取り消してよっ!」
「っ、牛女のクセにっ……。よくもやりやがったなっ!」
っ、突っかかってきたっ!
私と山田が取っ組み合いになると、一時的に静まっていたクラスのみんながザワつきだした。
負けないっ。
俊光君に対して悪く言ったことだけは、絶対に取り消してもらうんだからっ!
「やだっ……。二人とも、やめてぇ!」
華奢な明里が必死になって、私と山田の間に入ろうとしてくる。
「明里、止めないでっ! 私、コイツだけは許さないっ!」
「お前っ、ホントにマジでイラつくんだよっ! いっつも兄ちゃんしか見えてなくてっ!」
「うるさいっ! 早く取り消してよぉっ!
取り消してっ……俊光君に謝ってよぉーっ!」
――そのあと、誰かが呼んできた担任の先生にケンカを止められちゃって、私と山田はそのまま指導室へ。
即行で親呼び出し。アンド、厳重注意を受けちゃったという……。
