
俊光と菜子のホントの関係
第4章 『私と俊光君』
「はぁー? ないよ、そんなのー。私はちゃんとお兄ちゃんとして、俊光君が好きなだけだよ。
山田ってば、ホントにバッカじゃないの!?」
って、ムキになって言い返したけど、
「バカはお前の方だろ。男のこと、なんもわかってねぇーんだなー」
コイツ、ムカつくぅー。見下すように「はんっ」て鼻で笑ったりするなんてっ。
「なによっ。私が何をわかってないって言うのぉ?」
「……たまにいるじゃん。
性的欲求を満たしたくて、身近な妹に手を出すってヤツ」
「…………え?」
『性的欲求』というフレーズにまたフリーズしちゃった私。そんな私を見た山田は、勝ち誇ったように話を続けた。
「だからお前の兄ちゃん、そうやってお前を本気で惚れさせて、いいようにしてやろうって企んでんだよ。
お前、乳がデカいから余計に狙われてんぞ、きっと。
高校生の男子って、かなり性欲強いんだぜー。うちの兄ちゃんも高校生だから、よくわかるんだよ。
いくらいい兄ちゃんだからってな、お前はキレイに見すぎだっつーの。現実を知れよ」
「なっ……によ、それ……」
信じられないっ……。
山田の一言一言が、かんに障ってくる。
怒りで体中が震えてくるっ。
「山田っ、いい加減にしなよっ! それ、菜子にとって暴言以外の何物でもないんだよっ!」
私の代わりに、明里が立ち上がって山田に怒った。
「うるせー幸田(こうだ)。コイツにはハッキリ言ってやんねーとわかんねーだろっ」
「そんなこと、ハッキリ言わなくてもいいでしょっ!」
……っ、ひどい……ひどすぎるよっ。
俊光君が、そんな痴漢か変態みたいなことを考えてるだなんてっ……。
あの俊光君が、そんなことをっ……。
(怒るワケないだろ。こんなプレゼントしてくれたんだから。
菜子、ありがとな。すごく嬉しかったよ。これ、ずーっと大事にする)
(いいって。そんな高いもんじゃねぇし。
誕生日プレゼントのお礼)
私のことだけを悪く言う分には、まだいいよ。
だけど――あの優しい俊光君のことまで悪く言うのは、絶対に許せないっ!
