恋の声
第6章 これはマネージャーの仕事じゃない!?
「まぁ、女性の身長と男性の身長は違いますよね。…あれ?このヒロイン。158センチだ私と同じ。」
ヒロインの都 小夏みやこ こなつの体格は私と同じだった。
「じゃあ…瀬戸川さんはヒロインのセリフをアフレコして下さい!読み合わせをしましょう!!」
また謎の発言が瀬戸さんから飛び出した
「いやいやいやいや無理ですよ!私なんか学芸会の幼稚園児レベルで、棒読みなんか絶対練習相手にならないですから!」
思わず持っていた改定前の台本を握っていた手に力が入る。
「全然いいですよ。このヒロイン役するの声優さんじゃないんですよ。アイドルの子で…なんかまぁ結構棒だったから…」
「最近声優業やり始めたアイドルの子ですよね。可愛いし、アニメにも話題性は大切ですから。政治的なキャスティング感がありますけど…」
「瀬戸川さん!15ページから!行きますよ!」
瀬戸くんの目の色は変わり、スイッチオンされている。
「な、なんで私がこんな羽目に……」
僕しか知らない君の身体 は少女向け漫画の少しエッチなもの。若干のサービスシーンがある程度の漫画ではあるがドラマCDではサービスシーンの誇張がある。まぁ普段は漫画なのに声が乗るんだから、エッチなシーンが入るのは当然だとは思う。
『これ…好きなんだろ?』
瀬戸さんの吐息の篭った色っぽい声に思わず聞いているだけで恥ずかしく、まむず痒くなる。
[やっぱ本物の声優さんは違うなぁ…よく恥ずかしがらずにこんなこと…]
『そ、そんなことないんだから(棒)』
『嘘だよ。正直に言って…ほら…』
[なんでこんな平気な顔してるのこの人…恥ずかしい私がおかしいみたいじゃない!!]
『……あっ(棒)』
桜木くんに触れられてヒロインから出た声。何て恥ずかしい。棒読みで言うだけでも恥ずかしいというのにこの人は…
瀬戸さんはすぅと目を一度閉じてから、私の顔を見た。目力があるから、思わず視線を晒してしまう。
「な、何ですか瀬戸さん…恥ずかしいから続けて下さいよ…」
瀬戸さん目を少し細めた
「今の"あっ"て言うの…もうちょっと感情込めて言ってみましょうか」
真面目な顔から出た言葉が思わぬ間抜けはセリフ。
手が汗で濡れているというのに、
「な、何言ってるんですか!?セクハラですよ!」