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たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第1章 杉並実果留



「ちょっと待った!」

「はい?」


 いけない。つい声を張り上げて、ちょっと待ったコールをしちゃった。それに対して夕崎君、目を丸くしている。落ち着け、私。


「えーっと……夕崎君……って呼んでいいのかな?」

「はい」

「夕崎君はそのぉ……いつも一緒にいる男子を、私の彼氏だと思ってたの?」

「はい」

「ど、どうして?」

「え? それは……お二人の雰囲気がとても良くて、お互いを心から許し合っているのが、端から見ていてよくわかりますから。それで『あぁ、恋人同士なんだな』……と」

「………………」


 私はア然とした。

 こんな人、初めて。私と武を見て、双子とか兄妹とか言わなかった人は……。


「? どうか……しましたか?」


 夕崎君は、私の顔を覗きながら訊いてきた。


「あっ、いやっ! 私達を双子だと思わなかった人、初めてだなぁと思って」

「え!? ……あ、すみません! 双子だったんですか! てっきり恋人同士かと……言われてみれば、確かに似てますよね」

「あーっと! いやいやっ! 双子じゃなくてっ!」

「あっ……え? えっ?」


 夕崎君を混乱させちゃってる。

 私も初めてのことで動揺しててパニックだしー!

 ほらもう、落ち着いて落ち着いてってば!


 気持ちを落ち着かせるために、密かに一呼吸をした。


「その、つまり……私と、その男子は、赤の他人同士なのにそっくりすぎて、昔から双子みたいって言われてきたの。
 だから、恋人同士って言われたのは夕崎君が初めてだったから、すごくビックリして……」

「あ……そういうことでしたか」

「ごめんなさい、混乱させて」

「いえ。自分の方こそすみませんでした。突然告白なんかしたりして。あなたを困らせて。彼氏にも悪いことをしてしまいましたね。
 つまり自分は、ただ気持ちを伝えたかっただけなんです。どうこうしようってわけではありませんので、安心して下さい」

「あ……はい……」


 夕崎君は、毒気のない笑みを見せた。


 もしかして私……少しだけ心を奪われちゃってるかもしれない。

 彼氏がいると知っていながらも(いや、実際彼氏じゃないんだけど)、勇気を出して告白してくれたことと、私と武が恋人同士に見えたってことが嬉しくて、かなり舞い上がってる。


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