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たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第1章 杉並実果留



「あの……すみません」

「……あっ、何?」


 ボンヤリとしかかった私に、夕崎君が遠慮がちに声をかけてきた。


「自分は、女性とおつき合いをしたことがなくて、無知な部分がたくさんあります。それできっと、あなたに退屈な思いをさせるかもしれませんが……」

「だっ、大丈夫だよっ。私もつき合ったことがないしっ。それに私の本性を知ったら、夕崎君『コイツ何て女だ!』って思うかもしれないよ?」


 夕崎君に、さりげなく注意を促した。


「いや、それはないのでは?」

「いーやっ。あるんだなぁーこれがっ」

「あ……ははっ。そう……ですか?」

「そうそう! あははっ!」


 ガチガチだった夕崎君が、リラックスしてきて一緒に笑い合えるようになってる。

 それはよかったのだけど……私の良心はチクチクと痛みっぱなしだった。


 夕崎君……本当にあるんだよ、これが。

 私は、夕崎君を利用しようとしてる。

 本当に『何て女』……なんだよ。


「なら、まずは……お互いを知ることから始めてもいいですか?」

「そうだよね。 私達、お互いをよく知らないし……あ! そしたらさ、カフェかどこか入ろっか!」

「えっ?」

「どっか入って、二人でお互いのことを教え合おうよ。時間……ある?」

「え、えぇ。ありますが……」

「よしっ! 決定! 行こ行こっ!」


 私は夕崎君を半ば強引に誘い、駅前のカフェへと向かった。


 夕崎君、ごめんね。

 初めての彼女が、最低で……。






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