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たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第1章 杉並実果留





 カフェでお互いのことをたくさん話したあと、夕崎君は私を家まで送ってくれた。


「夕崎君、ごめんね。家まで送ってもらっちゃって。私が言い出しっぺだったのにー」

「いいえ。こちらこそ、薄暗くなるまですみませんでした。杉並さんとの話が楽しくて、つい時間を忘れてしまいました。
 それに自分の家、ここからそんなに離れてはいないんですよ。この近くのバス停から乗ればすぐですし」

「そっかー。隣町って言ってたもんね」

「はい」


 家の門の前で話していると――


「……実果留?」


 その聞き慣れてる声に、ドキッとした。

 声の方を振り向くと、


「あっ……た……武っ」


 私服姿の武が、不思議そうに私と夕崎君を見つめながら立っていた。


「何? 実果留、今帰ってきたの?」

「う、うん……」


 今までなめらかに動いていたはずの首が、急に錆びついたみたいに動きにくくなり、ギィギィと音がしそうなぐらい、ぎこちなく頷いた。

 武の手には本屋の紙袋が。駅前の本屋に行ってたんだ。

 うわぁ……まさか、いきなりこんなタイミングで会うなんて。心の準備が整ってないのにーっ!


 武は夕崎君と目が合うと、表情を変えないまま軽く会釈をした。夕崎君も、やや口角をあげて会釈した。


 この状況……気まずっ! って感じているのは、悪いことをしようとしている(いや、もうすでに悪いことをしている最中の)私だけだろうけど。

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