
たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第2章 佐倉武
「もう……行けよ」
「え?」
「風邪でも移ったら、デートどころじゃなくなるだろ?」
「あ……そうだよね。武も寝てないと。じゃあ私……行くね?」
実果留はゆっくりと立ちあがり、椅子を机に戻した。
本当は……『行くな』と言いたい。
「大人しく寝てるんだよ」
と、スクールバッグを肩にかけた。
大人しく寝ていたくねぇんだよ……。
「また明日、お見舞いにくるからね」
実果留は、部屋のドアへ歩き出した。
ダメだ。もう……限界だ。
このまま何もわからないフリして黙ってるなんて……もう出来そうにない。
「待てよ。実果留」
「……ん、何?」
実果留が呼び掛けに振り返った。
「お前さ……いつまで苦しそうな顔をしてんだよ」
「……えっ……」
熱で意識がもうろうとしながらもそう言い放つと、実果留は一瞬ギクッと肩を震わせた。
「いつもそうなんだよ……」
「な、何がよ?」
「俺に夕崎のことを話すお前って、いつも苦しそうなんだよ。実際楽しいんだろうけど、笑ったりしてるけど、どこか無理してるというか。
それにさ、あんまり自分から夕崎の話をしようとしないよな? 俺から振って、やっと話す? みたいな。無理してつき合ってんの、バレバレ」
ズカズカと土足で入り込むようにズケズケと言うと、実果留の表情が一気に強張った。
「そっ……そんなことっ、」
「あるよ」
「ないって!」
「あるっつってんだろっ!!」
熱が吹っ飛びそうなぐらい怒鳴ると、また実果留がビクッと震えた。
あーヤバ……今のは効いた。声を出しすぎた。
意識がだんだんとグラついていってるのがわかる。
もう、感情も抑えきれねぇ。
