
たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第2章 佐倉武
「人間、時には強引さも必要なのだよ? ユーも男だったら、ガバッといっちゃいなよ」
人の気を知っておきながら、実果留母は某有名な社長の喋り口調をマネして軽く言った。この人、ホントに母親かよ?
「一回ガバッといったら俺、留まることを知らないぞ。いいのかっ?」
「いいわよー。パパには黙っててあげるし。
ついでにー……これもあ・げ・る!」
と、ポケットから何かを取り出し、ポイッと俺の前に放り投げてきた。
……ん? 何だ、これ。
それが何かとすぐに理解することが出来ず、指で摘まんで持ち上げてみた。
したら……バラッと長くなり、小さな正方形の袋がいくつか連なっていた。しかも、それぞれの袋には、中身を主張するように輪っかがくっきりと浮き出ている……
って、おいっ!
こっ、これはっ――押し倒してから、一通り行為に及んだ後に使う物じゃねぇかよっ!
さすがの俺も、これには固まる。
数的に5回は出来る……って、そうじゃなくてっ!
「……あ。じゃあ私そろそろ帰るわ。小説も書かなきゃだし。じゃあね、いろんな病を抱えるボーイよ。お大事にー」
実果留母は、何事もなかったかのように椅子を机に戻し、空になったおかゆの器をお盆ごと持って、ドアに向かっていった。
「おい待てっ! 『これ』持って帰れよっ!」
長く連なった『これ』を、実果留母に突きつけた。
「あー気にしないで気にしないで。別にわざわざ買ったもんじゃないからー」
「いや、遠慮してるんじゃなくて――」
「バイバーイ」
「おぉい!」
ドアは無情にも、バタン……と閉まってしまった。
「……おぉい、勘弁してくれぇー……」
だんだんと息苦しくなってきたし……もうダメだ。いろんな意味で死にそうだ。
実果留母がいなくなった途端に、ドッと体が重くなった。頭もぐらんぐらんしてきた。
うぅー、くそぉ……。
『これ』……本当は、タンスの奥深くに封印したいところだけど、今は歩く気力もねぇし……とりあえず、ここにでも入れておこう。
俺は、ベッドのヘッドボードの小さな引き出しに突っ込んで、そのままうつ伏せで倒れ込んだ。
