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第1章 葬儀屋サイコメトリ

そしてなんだかんだ言いながら、結局動物好き……というか情に厚い姉に、春樹は何も言わず朝と同じように素直に頷いて、ネコグッズを抱えた。


【3】

 「……」
夜──。一人自室の机に向かって昼間済ますはずだった予備校の課題をこなしていた春樹は、もう随分長いこと座りっぱなしだったような気がしてふと顔を上げて時計を見た。針は日付が変わる直前を指し示している。
 更に椅子をぐるりと回して部屋を見れば、窓際のラックの上で丸くなるネコ──モモの姿。後で片付けようと思って放っておいたタオルや衣類は、しっかり彼女のベッドになって潰されていた。
(普通、もっと警戒して狭いところとかに隠れるもんなんじゃないか?)
キャットフードもよく食べたし、缶詰の催促はされたし、おかずは盗まれるし、ハヤテを触っていればヤキモチなのか自分も構えとミャーミャー鳴かれたし。
 もはや数年前から家猫だったような尊大な振る舞いに、両親はのほほんと笑い、冬華は呆れていた。今、犬派・猫派論争が勃発すれば冬華は間違いなく前者を選ぶだろう。
(……まあでも、……しょうがないよな)

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