toy box
第1章 葬儀屋サイコメトリ
部屋の隅、薄暗がりの中に浮かぶネコグッズの入った段ボール箱。春樹は立ち上がるとそこに向かい、猫じゃらしやらパンチングマシンやらネズミの玩具やら、たくさんのネコグッズの隙間から生える、筒状の真新しい紙の束を取り出した。
開けばそれは、たくさんのネコの写真が乗った来年のカレンダー。
八月の写真が特にモモに似ていて、そこに触れれば……それをこたつでモモに見せて、何かを話し、笑っているおばあさんの姿が頭に浮かんだ。
おばあさんは来年も、モモと一緒に生きていくつもりだったのだ。それが当たり前に来ることを、疑いもしなかったのだ。
そう思えば……捨てられなかった。
──春樹君、キミ。
──“視える”んでしょ。
「ハア……」
不意に徳山の言葉を思い出して、春樹はまたカレンダーをくるくると丸める。
(……向いてないよなあ)
徳山は、春樹のことを霊感がある──つまり幽霊が見えると勘違いしているようだったが、実際はそうではない。似ているが違う。いっそ幽霊だった方がマシなくらい、春樹が視る幻影は優しくて儚いものの方が多かった。
開けばそれは、たくさんのネコの写真が乗った来年のカレンダー。
八月の写真が特にモモに似ていて、そこに触れれば……それをこたつでモモに見せて、何かを話し、笑っているおばあさんの姿が頭に浮かんだ。
おばあさんは来年も、モモと一緒に生きていくつもりだったのだ。それが当たり前に来ることを、疑いもしなかったのだ。
そう思えば……捨てられなかった。
──春樹君、キミ。
──“視える”んでしょ。
「ハア……」
不意に徳山の言葉を思い出して、春樹はまたカレンダーをくるくると丸める。
(……向いてないよなあ)
徳山は、春樹のことを霊感がある──つまり幽霊が見えると勘違いしているようだったが、実際はそうではない。似ているが違う。いっそ幽霊だった方がマシなくらい、春樹が視る幻影は優しくて儚いものの方が多かった。