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第1章 葬儀屋サイコメトリ

『ふむ。それだけでは霊体を認識する媒体が視覚から触覚に変わっただけで、霊感があるのとそう変わらんな。葬儀屋にぴったりじゃないか。……私の方が美人だ』
モモは自分に似ているというネコの写真を踏みつけ、ふと黙る。
(……きっとおばあさんのこと、思い出してるんだろうな)
春樹は今更ながら、この百年生きたというネコの生きざまを想った。
 「その……おばあさん、……可哀想だったな」
『……ふん。人間など、いつの時代も変わらぬわ。ちょっとの時間、ちやほやと私を褒めそやしては気まぐれに飯を寄越し、そうでなければ忘れるか、飽きて捨てるか、知らない間に勝手に死んで消えていく。お前かて、そうであろう』
「まあそりゃあ、拾ったのは俺だし、一応人間やってるんでいつかは死ぬ……けど」
モモが今まで何人の人間と関わりを持ってきたかは分からない。それでも春樹はモモが隠れていた押し入れの、布団を触ったときに視た記憶を思い出す。
 この尊大で意地っ張りなネコは、もしかしたら誰にも見られないところで泣いて、それを何とか呑み込んで、百年を遣り過ごしてきたのかもしれない。
 名前を呼んでくれる声を、優しく撫でてくれる手を、求めては無くして。求めては無くして。

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