テキストサイズ

toy box

第1章 葬儀屋サイコメトリ

 テキストや筆記用具を片付けて、今日はもう寝ようとベッドを見ればそこはモモに占拠されている。
「あのモモさん、ベッドに対して垂直に寝るのやめてくれませんか。俺、足伸ばせないんで」
『お前も丸くなって眠ればいい。でなければはみ出せ』
「寒いから嫌です」
春樹はベッドに入り、モモを布団ごと抱き上げるとそのまま中に潜り込む。モモはムッとしたような顔でのそりと春樹の腹に上がると、春樹にお尻を向けてそのまま箱座りを決め込んだ。
「モモさん」
『……』
モモは何も答えず、ぺちりと春樹の顔をしっぽではたく。それから照れ隠しのように、お尻を向けたまま呟いた。
 『……今日は、ひとまず感謝しておく。私を見つけてくれたのも、その“さいこめとり”というもののおかげなのだろう?』
「ああ……。おばあさんが、こたつでココアを飲んだり、ラジオを聞いたりしながら縫い物をしてた。その膝の上に、モモさんがいるのが視えた」
『……うむ。長年生きてきたが……共に寿命で果てるのも幸せかと思えるほど、穏やかな暮らしだった。……彼女の想いも、大事にしてくれてありがとう』
「……モモさん」
『お前は確かに、葬儀屋の息子だ』
「……」
春樹はそれには何も答えず、ただモモの体を優しく撫でた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ