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第1章 葬儀屋サイコメトリ

【4】

 それから──。
「おはようございます」
「おはよう、春樹君」
今日も春樹は見慣れた作業着をまとい店のワゴン車に乗り込んだ。ただし、朝食は母が喜ぶほどしっかり摂って。
 そんな春樹を追うように、モモが隣の席に飛び乗り座り込む。それを徳山と野々村がルームミラー越しに見て、穏やかに笑った。
「すっかりなついちまったな」
「本当に。モモちゃんも、監督役ご苦労だねえ」
『うむ、まだこやつが未熟者ゆえ、致し方ない』
「……」
そういうモモも猫又としてはまだ未熟なようで、普通の人間には言葉も通じないし尾も一本に見えるらしい。
 そして四六時中、それこそ仕事のときにまで春樹の後を付いて回っているので、「ネコが偲ぶ葬儀屋さん」とちょっとした話題にもなっていた。
 「現場続いてるけど体は大丈夫か? ヤワそうだからなあ~、お前」
「それより失敗しないか気が気じゃなくて。でもなるべく両方に関われるように、シフト入れてもらってますから」
「ははは、春樹君もやっと跡取り息子の自覚が出てきたかな」
そう言って迎えてくれる従業員は少なくない。

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