toy box
第1章 葬儀屋サイコメトリ
先に車に乗っていたのは父の信頼厚いベテラン社員の徳山と、春樹とも年が近いガテン系の野々村だった。
「や~、こんな大事な時期に悪いなあ春樹君」
「いえ、元々は父がやらかしたんで」
「明日筋肉痛で親父と二人寝込むなよ、受験生。んじゃ車出しますから、徳サン、シートベルト。お前も後部座席、忘れんな」
「うぃーっす」
従業員と顔見知りなのも良し悪しだったが、学生時代に比べ付き合いが限られてしまう浪人生には精神衛生上これがとても助かる。
予備校の教師や友人間で話題に上がるのは、そのほとんどが受験のことで息が詰まって仕方がない。
かといって昔の友人は新天地で新しい大学生生活を満喫していて会い辛いし、たまに帰ってきてもやはりどこかで気を遣われてしまうのだ。
だから、気兼ねなくいろいろな年代の人といろいろな話ができるのは、確かに一種、息抜きになるかもしれなかった。
ただ問題は、それを軽々しく息抜きと言っていいのか悪いのか分からない、多少春樹の心に残る罪悪感じみたもの。
その原因は、もちろん……左胸の社名が示す通り、春樹が関わるのが、人の生き死にに関する仕事だからという一点に尽きる。
「や~、こんな大事な時期に悪いなあ春樹君」
「いえ、元々は父がやらかしたんで」
「明日筋肉痛で親父と二人寝込むなよ、受験生。んじゃ車出しますから、徳サン、シートベルト。お前も後部座席、忘れんな」
「うぃーっす」
従業員と顔見知りなのも良し悪しだったが、学生時代に比べ付き合いが限られてしまう浪人生には精神衛生上これがとても助かる。
予備校の教師や友人間で話題に上がるのは、そのほとんどが受験のことで息が詰まって仕方がない。
かといって昔の友人は新天地で新しい大学生生活を満喫していて会い辛いし、たまに帰ってきてもやはりどこかで気を遣われてしまうのだ。
だから、気兼ねなくいろいろな年代の人といろいろな話ができるのは、確かに一種、息抜きになるかもしれなかった。
ただ問題は、それを軽々しく息抜きと言っていいのか悪いのか分からない、多少春樹の心に残る罪悪感じみたもの。
その原因は、もちろん……左胸の社名が示す通り、春樹が関わるのが、人の生き死にに関する仕事だからという一点に尽きる。