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第1章 葬儀屋サイコメトリ

 今はぎっくり腰で唸っている父が三代目。そして母や姉が事務員として働いている、従業員もわずかな──そんな町の小さな葬儀社が、春樹の実家だった。
 そして大抵の場合、春樹が関わるのは姉が提案して立ち上げた、もう一つの事業の方。

 「──今日はどこへ行くんですか?」
「駅の近くにある小さなお家なんだけどね。息子さんが東京の方で弁護士さんやってるらしくて、忙しいしいちいち見てる暇ないから、全部片して捨てちゃってって。娘さんも、お葬式の日に来て着物とか装飾品とか、そういうのは持ち出してったんだけどねえ」
「ヒデー話だよなあ、テメエの母親だろって」
「いやいや、最近多いらしいよ。だから冬華ちゃんも、新しく商売始めようって思ったんじゃないかなあ。今は家族葬も多いし、昔みたいに豪勢なお葬式もやらんから。終活やらペット葬やら、葬儀屋も変わらんとやってけんのだろ」
「死ぬ計画立てるより、宝くじで一等当たったときの計画立てた方が長生きできそうっすけどねー」
そんな話をしながら摂る朝食のバナナ味はなんだか薄い。
(とりあえず宝くじで一等が当たったら、どっかの百貨店で贈答用に売ってる何万もするようなバナナ食おう)
春樹がそんなことを考えているうちに車は駅前通りを進み、線路を越えて、駅の裏手にひっそりと佇む古い一戸建て住宅の前で止まった。

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