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第1章 葬儀屋サイコメトリ

「おいおい、これって──徳さん! この家、ネコがいるっすよ!」
「ええ? だってこの家、お葬式終わってからずっと閉めっきりだよ?」
 驚いた野々村と徳山は、あわててネコが潜り込みそうな場所をあちこち覗き始める。春樹もそれらしいところを確認し、ふと……おばあさんが亡くなった、和室に行ってみた。
 和室には押し入れがあり、ほんの少し襖が開いている。
「……」
そして少し立て付けの悪いそれを開くと、奥から何かが跳ねたようなガタッという音がして、
「──ナァァァァ」
そちらを見れば、なんとも言えない低い声で唸る灰色のネコと目が合った。

 ネコは使用感のある布団と毛布の間に挟まっていて、布団に触れば、おばあさんの周りをうろうろと歩いて、時折お腹の上に乗ったり顔を舐めたり、……そんなことを繰り返している姿が頭に浮かんだ。
 いつまでも起きてこないおばあさんを、ネコは毎日起こしにいったのだろうか。
 ひとりぼっち。



 「だからって普通連れてくるー?」
「他にどうしようもないだろ。それより姉さん、ペットって器物扱いで一応財産になるんじゃないの? よく知らねーけど。依頼人の息子さんに連絡取った方がいいんじゃ」
「あ──そっか。もしかしたら、引き取ってもらえるかもしれないし」

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