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｢起きろー｣

英治はエプロン姿の洋太の声で目を覚ました。時計はまだ八時を指している。

｢今日休みだからもうちょっと寝る｣

英治は布団を頭まで被った。

｢何言ってんだよ、飯が冷めるだろっ｣

洋太は英治が被っている布団を掴みパタパタと無理矢理上下させた。

｢寒い寒い、分かった、起きる｣

パンツ一丁で寝ていた英治は起き上がり、椅子にかかっていたパーカーを羽織った。

｢それにしても洋ちゃんさー、昨日あんなことやこんなことをしたのに、朝から元気だよねー｣

英治は昨夜の洋太を思い出し、だらしない笑みをこぼした。その発言に対して腹を立てた洋太は眉間にシワを寄せ、冷めた目で英治を見つめた。英治は洋太の顔を見て発言を後悔したがもう遅い。

｢変態っ｣

洋太はそう吐き捨てると、履いていたスリッパを片方脱ぎ、英治の頭を勢いよく殴った。スカーンと気持ちの良い音がなる。

｢ごめんごめん…… あー、朝ごはんは何かなぁー。楽しみだなぁー｣

英治が一生懸命話をそらした。

｢今日はお前の大好きなパンケーキなんだから、早く服着てこい｣

洋太は眉間にシワを寄せたままだったが、本気では怒っていない。洋太はカーテンを開けてから部屋を出ていった。

｢俺が変態だったら、洋ちゃんはド変態だよな｣

英治は洋太が出ていったのを見計らって小声で一人つぶやいた。

英治は鼻歌を歌いながら着替えた。英治にとってこのようなたわいもない日常のじゃれ合いが幸せだった。そしてそれは洋太にとっても同じである。その頃、キッチンで支度をしている洋太も鼻歌を歌っていた。