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午後六時過ぎ頃、英治と那智と井出は居酒屋で乾杯した。本当は那智と井出とはお昼過ぎに会う約束をしていたが、急遽夜御飯を食べることに予定が変わった。英治は夕飯の当てがなくなり、那智と井出は寝坊をして、お互いの意見が一致したからである。

那智と英治は高校からの付き合いで、良き友人であり、理解者だった。二人はそれぞれ違う大学へ進み、英治は大学を中退後数年間アジアを放浪していたが、二人の縁は切れなかった。そして今では二人でたまに遊ぶ仲である。今回はたまたま井上も一緒に三人で飲むことになった。洋太も誘って四人で会いたいが、みんなそれぞれ忙しく、実現したことは無い。本当は今日も洋太に用事がなかったら誘うつもりだったが、あいにく洋太は洋太で珍しく飲みに行ってしまったのだ。

ちなみに那智と井上は、ゲイカップルとしては漫画のような出会いだった。那智は美術大学に入学後、一つ上の先輩の井上に恋をした。顔もスタイルも良く、大学内では有名人だった。もちろん井上はノンケである。どうしても諦められなかった那智は井上が大学を卒業するとき、必死の覚悟で告白をした。そのときに大泣きする那智がかわいくて井上は付き合うを決めたのだった。もともと那智は中性的な容姿だったので抵抗も少なかったのだろう。