俺の変カレ
第1章 俺の変カレ1
二時間後、酒に弱い那智は潰れた。
「英治君ごめんね」
井上は潰れた那智をタクシーに乗せるのを手伝ってくれた英治に礼をした。
「いえいえ、また一緒に飲みましょうね」
「今度は英治君の彼氏君も一緒にね」
那智と共に井上はタクシーに乗り、帰って行った。
現在地から英治の家まで近くは無かったが、歩いて帰れないほどの距離でも無かった。夜風に当たりながら帰るのも悪くないと考えた英治はゆったりとした歩調で歩き出した。お酒で気分が良くなっていた英治は鼻歌を歌い、訳もなく一人で笑った。不思議なくらい気持ちがいい。今ならなんでもできる。そんな気分だった。しかし英治のそんな気分もあの男を目撃して一瞬で消え失せた。海堂だ。英治の百メートル先を洋太と海堂、もう一人の男が歩いている。英治は見間違えるはずがなかった。そしていてもたってもいられなくなった。普段怒らない英治だったが、酒のせいもあってか、収まらない激情が身体中を駆け巡り、脳みそが沸騰しそうだった。気付くと英治は洋太めがけて走っていた。
「洋太っ」
英治は洋太の背後から腕を掴んだ。その場にいた二人の男は驚いていた。
「っ……」
洋太の顔は動揺し、言葉が出てこないようだった。
「お久しぶり。勘違い、しないでね」
海堂がこの場に流れていた重い沈黙を破り、英治に話しかけた。
「僕たちはお先するよ。今日はありがとうね」
海堂は洋太に向かって手を振り、隣で訳も分からなく突っ立っていた洋太の後輩である十望の手を引いて逃げた。
残った洋太と英治には未だに沈黙が流れていた。
「英治君ごめんね」
井上は潰れた那智をタクシーに乗せるのを手伝ってくれた英治に礼をした。
「いえいえ、また一緒に飲みましょうね」
「今度は英治君の彼氏君も一緒にね」
那智と共に井上はタクシーに乗り、帰って行った。
現在地から英治の家まで近くは無かったが、歩いて帰れないほどの距離でも無かった。夜風に当たりながら帰るのも悪くないと考えた英治はゆったりとした歩調で歩き出した。お酒で気分が良くなっていた英治は鼻歌を歌い、訳もなく一人で笑った。不思議なくらい気持ちがいい。今ならなんでもできる。そんな気分だった。しかし英治のそんな気分もあの男を目撃して一瞬で消え失せた。海堂だ。英治の百メートル先を洋太と海堂、もう一人の男が歩いている。英治は見間違えるはずがなかった。そしていてもたってもいられなくなった。普段怒らない英治だったが、酒のせいもあってか、収まらない激情が身体中を駆け巡り、脳みそが沸騰しそうだった。気付くと英治は洋太めがけて走っていた。
「洋太っ」
英治は洋太の背後から腕を掴んだ。その場にいた二人の男は驚いていた。
「っ……」
洋太の顔は動揺し、言葉が出てこないようだった。
「お久しぶり。勘違い、しないでね」
海堂がこの場に流れていた重い沈黙を破り、英治に話しかけた。
「僕たちはお先するよ。今日はありがとうね」
海堂は洋太に向かって手を振り、隣で訳も分からなく突っ立っていた洋太の後輩である十望の手を引いて逃げた。
残った洋太と英治には未だに沈黙が流れていた。