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その恋を残して

第7章 眠り姫……か

「さ、沢渡さん……どうしたんですか?」

『突然のご連絡となりましたこと、大変失礼いたします。実はお嬢さまが、朝から熱を出されたご様子……。そのような次第で、本日は大事をみて学校をお休みにさせていただきますよう。只今、担任の木崎先生にもご連絡をしてございます』

「熱って……風邪なんですか?」

『ええ、どうやらそのようですが……どうか、あまりご心配なさりませぬように。慣れない生活環境の中で、知らず知らずの内に疲れを貯めておられたのやもしれません』

「そうですか……じゃあ今は、とにかくゆっくり休んだ方がいいですね」

『ありがとうございます。では、これにて失礼いたします』

 沢渡さんとの通話は、それで終わった。

「……」

 風邪か……。昨日まで元気だったのに。まあ、沢渡さんが側にいるのだし、問題はないと思うけども……。

 そう思いつつも俺は何気に、沢渡さんが『お嬢さま』と呼んだことが少しだけ引っかかっていた。以前ならともかく、事実を知っている俺に対しては妙なのでは……?

 そんな風に気になりなりながらも、今日は俺一人、学校に向かって歩き始める。


 蒼空も怜未もいない一日。それは俺にとって、想像以上の空虚さを覚えさせた。なによりも、やっぱり心配。授業が進むにつれ、そんな気持ちが膨らんでゆく。

 それが徐々に――とにかく会いたい、という気持ちにシフトしていったのだろうか。

 授業が終わると、鞄を手にして俺はすぐに教室を飛び出していた。

「おおい――松名?」

 背中にから田口の声を聴いたけど、俺は振り返ることもせず昇降口へ向かう。

 校舎を出ると、校舎前のロータリーの傍らに普段はない真っ赤なスポーツカーを見かける。色目が派手な外車(よく知らないけど、たぶん)であることもあって、関心を示した生徒の何人かが、その周囲に群がり始めていた。

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