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その恋を残して

第1章 好きにならないで!

 その原因は、当然と言うのもなんだが、帆月蒼空にある。今、よそ見を注意されたのも、斜め前方の彼女の方を見ていたからに他ならない。

 どうしてって? だって、今朝の彼女の態度は、俺を悩ませるのに十分過ぎるものだし……。だが、厳密に言えば、それは正しくないのかもしれない。

 彼女の態度が理不尽と言うならば、問題なのはむしろ昨日の方なのだ。昨日の彼女が言ったことは一体、なんなのか?

 どう考えても、およそ初対面の相手に対する、振る舞いとは考え難い。

 今日、俺は隙を見ては帆月を観察していた。もちろん、俺の中に生じた疑問の為であり、それ以外に他意はない。ともかく、印象としては帆月は至って普通。少し大人しい(学校に慣れていないせいもあろうが)可憐な美少女なのであった。

 昨日、帆月と交わした会話は幻聴だったのか? 否、幻聴などと大袈裟なことでは無いにしろ、なにかしら勘違いがあったのかもしれない。

 どちらにせよ、納得はいかないが一方で、俺は少しホッともしている。

 俺は帆月に対して、一定以上の距離を置く覚悟をしていた。その為の手段が、逆告白という訳であるが。どうも、それをする必要がなくなったと感じていたのだった。

 誤解されない内に言うが、別に帆月のことが好きだからという訳ではない。単なるクラスメイトとしてでも、絶縁を避けられるなら、その方がいいに決まっている。

 俺の席から見える帆月は、ストレートの黒髪と白い左頬の一部だけ。やはり綺麗だな――と、俺は素直に感じていた。

「松名ぁ!」

 再度、木崎先生の声が轟き、俺はビクリと肩をすぼめる。

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