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その恋を残して

第7章 眠り姫……か


「じゃあ、さっさと行ってこいよ」

 何故、ここに来たのか? 田口は大して理由を訊くこともせずに、俺を送り出そうとしていた。

「サンキューな! それにしても、田口ってさ――」

「ああ?」

「今更だけど、いい奴だよな。面倒見だっていいし」

 俺が照れもせずにそう言ったを聞いて、田口は一瞬だけ面食らったような顔をしている。

「別に――他の奴だったら、頼まれてもしねーよ。お前だったからだ」

「どうして?」

「なんせ不器用でさ。人より遠回りしてんなって、そう思ってたから――じゃね?」

「ふーん、そっか」

「ああ、そうだよ」

 最後にニッと笑みを零した田口は、そのままバイクで走り去った。

 それを見送ってから、俺は気を引き締めて大きな屋敷を仰ぐ。

「よし――と」

 この屋敷に外門は無い。敷地は低い柵で囲まれているが、正面の入口は解放されていた。

 敷地内に足を踏み入れると、右側の庭先――沢渡さんの車の横に、誠二さんのスポーツカーが停まっているのが目についた。

「……」

 俺は緊張しながら屋敷の正面入り口の前に立ち、その傍らのインターホンを鳴らす。

 すると、程無くして――

『――はい』

 応答したのは、沢渡さんの声だ。

「突然、すみません。松名です」

『……少々、お待ちを』

 暫く待っていると、扉が開き沢渡さんが姿を現した。沢渡さんは、自らが扉の外まで出ると俺の前に立つ。

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