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その恋を残して

第7章 眠り姫……か


「既にご承知かと存じますが。誠二さまに命じられております故に、申し訳ございませんが松名さまを中にお通しすることはいたしかねますが」

 沢渡さんは、静かに言う。俺を見据えた表情に、疲れを滲ませていた。

 そして昨日、俺と誠二さんが話したことは、知っているようだった。

「今、彼女……は?」

「未だ眠りの中に……」

 現在は土曜日の朝。つまり木曜日の夜に蒼空が眠りについてから、もう一日半が経過しているということになる。

 その間に一度も目を覚ましていないということは、彼女は今、蒼空と怜未のどちらなのだろう? 否、今はそれよりも――。

「お願いします。蒼空に――怜未に――会わせてください!」

 俺は必死で訴えた。

「ですが……」

 でも、沢渡さんは表情を曇らせるばかりだ。

 俺のわがままで、沢渡さんを困らせている。そう感じた俺は、深々と頭を垂れた。

「ごめんなさい!」

「……?」

「俺――沢渡さんが、ずっと二人の心配していたのを見ていました。それでも沢渡さんは、なにも言わずに俺たちのことを見守っていてくれた。なのに、こんなことになってしまって……」

「ま、松名さま……」

「だけど俺、真剣なんです。俺なりに本気で蒼空と怜未のことを想ってきました。正直、俺になにができるかなんてわかりません。でも、お願いします……二人に会わせてください!」

 頭を下げ続けながら、無意識に手をギュウッと握り締めていた。感情を表したことに興奮を覚え、暫くそのまま固まったように動けなかった。

 ――ガチャ。

 扉が開く音を耳にして、俺は顔を上げる。すると――


「どうぞ、お入りください」


 沢渡さんが、俺を屋敷の中へ招くように、そんな姿勢を取ってくれた。

「沢渡さん――ありがとうございます!」

 俺は誠心誠意、その老紳士に頭を下げる。

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