テキストサイズ

その恋を残して

第7章 眠り姫……か

 沢渡さんは俺を先導し、蒼空たちの部屋の前まで来て足を止めた。

「誠二さまは昨夜から一晩中、お嬢さまについておられます」

 そう言って、俺の顔を見る。それは、俺の覚悟を推し量るようにも感じられた。

 姿を表せば、誠二さんが怒ることは目に見えている。それを考えれば、只ならぬ緊張感が襲う。だけど、この扉の向こうには、眠ったままの彼女が……。

「お願いします」

 俺が迷いなく言ったのを聞き届け、沢渡さんがドアを開いた。そして――


「キミは――!」

 誠二さんは部屋に入った俺を見て、警戒感を顕わとしていた。

「一体、どういうつもりなんだ? 昨日、あれほど――」

 そう口にすると、とても厳しい表情で俺の前に立ちはだかる。

「す、すいません。俺、やっぱり……」

 誠二さんの説得を試みようと思い、けれど――それと同時に、俺の視線の中に飛び込んでいたのはベッドで眠ったままの――その姿だった。

「オイ! 待つんだ」

 制止しようとする誠二さんの脇をすり抜けるようにして、ベッドへ近づく。身体が勝手に動いていた。

 そうして、ベッドの傍らに立った俺は――


「――!」


 そこに静かに寝息を立てる――『蒼空』の姿を見たのだ。

「……普通に、眠っているようにしか見えないだろう?」

 俺の横に立った誠二さんは、特に俺を非難することもなく、静かな口調でこう続けた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ