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その恋を残して

第8章 ……ちゃった、ね


「初めから、そう思ったわけではないんです。怜未は元々、私に対して遠慮がちなところもありましたから」

 自分の身体を失っている怜未が、常に蒼空のことを一番に考えてきたのは、俺も理解している。

「でも、少しずつ気づくことになります。私が松名くんを好きになるほどに……怜未は、自分の感情を見せなくなったのだと……。私はそれが哀しくって……だから、松名くんにあんなことを望んだんです」

 あんなこと――そうか。

「怜未にも『好きだ』と――俺に、そう言ってほしかった?」

 コクリと、蒼空が頷く。

「私と怜未は二人で一人だと――それは、本心から願ったことでした。でも、その後……私の中に芽生えた想いは、その願いと矛盾するものになります」

 芽生えたもの――それは、誠二さんが言っていた『嫉妬』なのだろうか。まるで自分を責めるように赤裸々に、その気持ちを吐露してゆく蒼空――。

 その身体が、小刻みに震えていた。

「蒼空、もういいんだ。気づけなかった俺の方が悪い。だから――」

「お願い――最後まで、言わせてください」

 蒼空の瞳には、強い決意が宿っているように感じた。

「わ……わかった。全部、聞くよ」

 蒼空は小さく微笑み、そして話を続けた。

「松名くんが怜未のためにケンカした、あの日。それを境にして、怜未は少しずつ自分の気持ちを話すようになりました。それは直接的な言葉ではなかったけれど、私にはわかったんです」

 蒼空はそこで、俺と目を合わせる。

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