テキストサイズ

その恋を残して

第2章 好きじゃないから……


    ※    ※


『私を好きにならないで!』


 その声を聴いた気がして、俺はビクリと上体を揺らす。

 あれ、俺は寝てたのか?

 そこはベッドの上。そして保健室であることを認識すると、俺は理由を思い出す。

「イタタ……」

 俺がボールの当たった、額を押さた時――

「大丈夫?」

 と、傍らから声をかけられて、思わずビクリとする。

「あ!」

 ベッドの傍らに座っていたのは、帆月蒼空だった。

「なっ、なんで?」

「ボールが顔に当たって、気絶していたんですよ」

「いや、そのことじゃなくて……」

 俺が訊いたのは何故、帆月が付き添っているのかということ。彼女もその意図を理解したらしい。

「今、保健の先生が居なくて。私、今日の体育見学だったから、様子を見ていてくれって頼まれたんです」

 そんな訳か。俺は、その理由に納得しつつ、別の疑問が浮かぶ。

「あのさ……さっき、なにか言った?」

「さっき……?」

「俺が寝てた時に」

「別に、なにも……」

「なら、いいんだけど……」

 さっき訊いたのは俺の脳内で再生された声だったらしい。それを確認して、少しホッとした俺は何気に時計を見た。

「あれ、もう昼休みか」

「そうだけど、保健の先生が戻って来ないから」

「それは悪かった。ありがとう。もう、平気だから」

「……」

 しかし、帆月はこの場を動こうとしない。

「どうかしたの?」

 下を向いていた帆月は、膝に置いていた両手をキュッと握ってから、今度は真っ直ぐに俺の方を見た。

「この前、私が言ったこと――怒っていますか?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ