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その恋を残して

第2章 好きじゃないから……

 俺は彼女の瞳をジッと見た。何処か気丈でもあり、何処か脆そうでもあり。昨日の帰りに話した時とは、何処か違っているような気がした。

「この前……帆月さんが編入してきた日のこと?」

「そうです」

「怒ってないけど……少しだけ驚いた」

 昨日は全くスルーされていた話を、今日は帆月の方から言いだされ、俺は不思議に感じていた。

「ごめんなさい」

 帆月は沈痛な面持ちで、俺に頭を下げる。

 初めて会った日。『好きにならないで!』と言われた俺は、確かに憤慨していた。

 だが、俺は昨日、彼女に何らかの事情があると感じている。そして、今の帆月の様子は普通ではないように思えていた。

「別にいいんだ。でも、もしなにか悩みがあるなら、よかったら話してみない?」

「何故、そんなことを言うんですか?」

「もしかしたら、力になれるかもしれないと思って」

 すると、俯いた帆月の肩が揺れる。

「ウフフフ……」

 彼女は突然、笑った。

「……?」

 面食らった俺を、帆月は真っ直ぐに俺を見据えた。その視線は先程までとは異なり、力強いもの。そして、その表情の変化に伴うように――

「そう――松名くんは、そういう人なんだ」

 明らかに口調も変化させる。

「どういう意味?」

「優しいのね。だけど、中途半端。それじゃ、私たちには――」

「私……たち?」

 帆月の言葉は謎である。そして、更にこんな質問を俺に投げかけた。

「一目惚れってしたことある?」

「えっ? ないけど……」

「本当に?」

 疑わしいとばかりに、俺を見つめた帆月。

「じゃあ、あの時。立ち上がって私を見つめたのは、一目惚れとは違うんだね?」

「あ、ああ……違うよ」

 その筈だ。俺は自問しながらも、慎重にそう答える。

「そう。それを聞いて安心した」

 と、帆月はイスから立ち上がり、保健室を出ようとする。だが、ドアノブに手をかけると、その足を止めた。

「困るの、一目惚れなんて……特に私は……」

 呟くようにそう言い残し、帆月は保健室を後にしている。

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