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その恋を残して

第2章 好きじゃないから……

 帆月蒼空は、なんらかの問題を抱えている。そのことは、彼女の言動から察するに、もう間違いはないのではないか。彼女が俺に、それを話してくれるのなら力になれるかもしれないのに――そう考えると、少しだけ歯がゆい思いだった。

「ん――?」

 もしかして――俺は帆月の為に、なにかをしたと思っているのだろうか?

 だとするのなら、それは少し意外な感情。しかし、自分の気持ちの一端を垣間見た気がして、僅かにすっきりした気分でもあった。その気持ちを恋愛感情とは呼べないし呼びたくもない。

 でも、帆月がもし、特別な事情故に苦しんでいるのならば、それを俺は助けたいと感じているのは事実のようだった。


 俺は家と程近い小さな工場で、週三日のペースでバイトしていた。家は母親と二人暮らしであるので、僅かでも家計の助けになればといった感じである。

 仕事内容は、工場で生産した製品の洗浄と梱包――なんて。はっきり言って高校生のバイトとしては、かなり地味なものだ。しかし、社交的とは言い難い俺にしてみれば、接客業などよりもずっと向いている。

 工場と言っても、とても小規模。社長夫妻と従業人五名程度で細々とやっている町工場だ。だが、今世紀に幾度も訪れた不況の波に屈することなく、今日まで生き延びてきていることは称賛に値している(何様かと言われそう)。

 と、いった訳で、今日も学校帰りに数時間、作業に没頭しているのであるが――

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