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その恋を残して

第2章 好きじゃないから……

「松名くん! コレ、箱が違ってるよ!」

 社長夫人(心の中では”オバちゃん”と呼称)から、そんな声が飛んだ。

 確認すると、確かに別の製品の箱に入れてしまっている。

「あ、ホントだ。すいません――」

「もう、気をつけてよ。ボーっとして、彼女のことでも考えてたのかい?」

「イエ――そんなのいませんし。と、とにかくやり直します」

 俺が梱包をやり直しているのを、オバちゃんはジッと眺ている。しかし、暫くして納得がいったのか、工場の奥へ去って行った。その姿を横目で確認しつつ、俺は少しホッとしつつ作業を続けるのだった――。

 普段は気のいいオバちゃんだが、仕事のこととなると、そこは厳しい。まあ、当然であるのだし、これは確かに責められても仕方のない凡ミスである。

 『彼女』とは違うけど。心の中で、そんな言い訳だけすると、その後は気を引き締めて残りの作業をした。


「終わりました」

「ご苦労様。気をつけて帰りな」

「はい、失礼します」

 バイトを終えると、外はもう暗くなっていた。

「!」

 頭にポツリと冷たいものが落ちる。どうやら、雨が降り出しそうだ。傘は持ってはいないが、家までは徒歩十分といった処だし、本降りになる前には帰れるだろう。俺はそのまま、足早に歩き始めていた。


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