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その恋を残して

第3章 私と、蒼空の秘密

 話を聞き、その病室の一場面がイメージされ、俺はグッと胸に込み上げるものを感じていた。

「――ですが、その祈りも通じることはありませんでした。事故より三日後――ついに意識が戻らぬまま、怜未さまはお亡くなりに……」

 沢渡さんは、なにかを悔いるようにグッと右手を握っている。話を聞いていればわかる。彼はきっと二人のことを本当に慈しんでいたのだと。それ故の無念が、握った拳に現れていた。

「私は蒼空さまを心配いたしました。静かに怜未さまをお見送りになった蒼空さまは、一見して気丈に振舞われているように見受けられました。ですが、その心中は他者が想像するのもはばかられるほど、悲哀に満ちているに違いありません。しかし――」

 言葉を区切り、沢渡さんは俺の方に向き直る。

「松名さま――私はこの先の話を、信じてくださいと申し上げることはできません。貴方が蒼空さま、そして怜未さまと接する上で、御判断いただきたくよう願いたいのです」

「わ、わかりました……」

 沢渡さんは、小さく頷き、そして話を続ける。

「あの時――蒼空さまはご自分の胸に手を当てて、私にこう言われました。『沢渡さん哀しまないでください。怜未は私と共にここに在ります』と。私は蒼空さまの優しさに胸を打たれました。誰よりも哀しんでいるのはご自身。それなのに、私を励ます為にそう言われたのだと感じたからです。ですが、それは私の思い違いだったのです」

「――?」

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