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その恋を残して

第3章 私と、蒼空の秘密


「意識の戻らぬ怜未さまの手を握られている時、蒼空さまがしていたのは祈りではなかったのです。蒼空さまは意識の中で怜未さまに語りかけ、怜未さまもそれに答えていた。つまり、お二人は心の中でお話をなさっていたのです。それは、お二人が心を通わせた双子であったから起きた奇跡だったのかもしれません。そして、それは怜未さまの肉体が限界を迎える直前のこと――



『怜未――私の中に来て』



――蒼空さまは、怜未さまにそう語りかけていたのです」


 淡々とそう語る沢渡さんを、俺は凝視した。そして、激しく動揺する心を止められない。

「ま、まさか……それで……怜未の魂が、蒼空の中に宿った……とでも?」

「その通りでございます」

「そ、そんな……こと」

「信じられないのはごもっともでしょう。しかし、短い間とは言え、貴方もお二人との交流の中で感じたことがあるはずです。だからこそ、怜未さまは今日、松名さまに全てを明かす決心をなさっているのですから」

 確かに俺の前の帆月は、いつも違って見えていた。それは実感している。

「つまり、帆月蒼空の身体の中に、蒼空と怜未の二つの意識が交互に現れている――そうして今まで、二人は共存を続けてきている……?」

「はい。正確に一日。朝、目覚めてより夜、眠りにつくまでを境として、お二人の意識は交代を果たされるのです。例えるのなら、コインの裏と表を返すように。お二人は一定のルールの下で、一つの身体を共有なさっているのです」

「…………」

 またしても、俺は呆然と言葉を失うしかなかった。

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