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その恋を残して

第3章 私と、蒼空の秘密

 そんな俺のことを気遣ってか、沢渡さんは俺の肩にポンと手を置いてくれた。

「お二人が現在に至った経緯につきましては、以上になります。後は、お二人の中で定められている”ルール”に関することなど――お聞きになられますか?」

「いえ……今、それを聞いても理解する自信がありません。それよりも、怜未さんと話をさせてもらっても、いいでしょうか?」

 やや間を置き、沢渡さんは頷く。

「二階の一番奥が、蒼空さまと怜未さまのお部屋でございます」

「ありがとうございます」

 俺は沢渡さんに一礼し、階段を昇る。しかし彼女と顔を合わせても、果たしてなんと言葉をかければいいのか……。


 コンコン――。

 おそるおそるしたノックの音に、部屋の中で反応があり。

 チャッ――と程なくして、そのドアは開かれた。

 出迎えた怜未が怪訝そうな視線を向けたので、俺は不意に顔を背けている。

 ――くす。

 笑った帆月怜未を、俺はまじまじと見る。悪戯っぽい表情は、やはりもう一人の――帆月蒼空とは、違っているように思えた。

「笑ったりして、ごめんね。想像した通りの顔してるから、つい。さ、入って――」

 怜未に言われ、俺は部屋へと足を踏み入れた。

「その椅子に座って」

 怜未はそう言うと、自分はベッドの上に腰を下ろした。

 勧められた椅子に座りながら、俺は何と声をかけるべきかと言葉を探す。すると――

「信じられないんでしょ?」

「そんなことない……けど」

「けど?」

「信じるだけの器が、まだ俺に備わっていない……そんな感じ、なのかな」

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