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その恋を残して

第4章 二人で一人なのです

「え――?」

「声をかけてくれたのが、松名くんだったから……」

「俺だと、なんで?」

「私にもはっきりとはわかりません。でも、たぶん……怜未が松名くんに対して、いい印象を抱いていたからだと思うんです。それが自然と、私の気持ちにも受け継がれていて――」

「いや……それだけは絶対にないと思うけど」

「そう、ですか?」

「ああ、間違いない」

 俺は自身満々に、きっぱりと言った。

 だって、初日、帆月蒼空として初めて出逢った怜未は――俺は、初めて逢った時の怜未の瞳と、その後に言われた言葉を思い出していた。それだけで、背筋が冷たくなりそう……。

 怜未が俺にいい印象を抱いたはずはなく。むしろ逆だと考えた方が、ずっと自然だった。

「じゃあ、私……松名くんに一目惚れしたのかも」

「まさか、そんな……」

 照れる俺を見て、蒼空が悪戯っぽく笑っていた。

「あ、今からかったでしょ?」

「フフ、どうでしょう。私にもわかりません」

 そんな風にじゃれ合い蒼空と話ながら、とても愉しいと感じている。こうして、少しずつお互いを理解してゆく喜び。俺はそれを初めて体験している。

 初めての恋に浮かれながら。でも、見えない振りをしているつもりはなかった。今朝の沢渡さんの視線が語っていたこと。『一目惚れ』と聞いて感じること。


 そして、俺をその現実に向き合せたのは、他ならぬ蒼空なのであった。

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