その恋を残して
第1章 好きにならないで!
「なんなんだ、あの女!」
これは、家に帰って自室に入った瞬間に、堰を切ったように口から出た言葉。
「少し可愛いからって、自意識過剰なんじゃねーの?」
苛立ちのままに、そう続けた。悪態をつきながらも、可愛いと認めてしまっている処が、我ながら哀れである。しかも『少し』だなんて思っていない。
「……」
一旦、落ち着こう。俺は本来、クールな人間であるはずだ。自分にそう言い聞かせ、俺はベッドに転がった。そして、今日あったことと、その対処について思慮する。
冷静に考えれば話は簡単だった。帆月蒼空は、俺が彼女のことを好きになったと思っている。それが、誤解であるから、俺はこんなにも苛立っているのだろう。
ハッキリ言って、とんだ濡れ衣だ。しかも、「好きだ」とか告白したわけでもないのに、それを迷惑とされてしまっている。
仮に俺が正式な告白をした後に、迷惑だと言ったのなら、それは仕方のないこと……いいや、果たしてそれでも、どうだろうか?
人の示した好意に対して、それを嫌悪する女なんて、なんか嫌だと感じる。断るにしても、それなりの礼節があるはずだし。まあ、仮定の話はいいか……。
とにかく、今の俺がすべきことは、帆月の誤解を解くこと。つまり「キミのことなんて、好きじゃないから」と明確に告げる。それは、通常の告白の概念の真逆の行為と言えようか。
なんか角が立つ気はする。しかし、このままでは俺の気が済まないのも事実なのだ。
「……」
黙って天井を見上げていると、最初に見た帆月の顔が浮かぶ。
もしかして、本当に俺は一目惚れを?
そんな疑問を、俺は首を振り即座に打ち消した。
俺を睨んだ彼女の瞳。そして、俺に言い放った言葉。百歩譲っても、俺の興味を引いたのは、その外見だけ。この先、俺が彼女を好きになることはあり得ない。
「よし……!」
明日、やってやろうじゃないか。逆の告白――逆告白を。
何処か大袈裟な気はしている。だが、俺は強くそう決意した。
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