その恋を残して
第5章 それは、おとぎ話だ
「いや、今の段階では誰もが納得するような説明なんて、僕にだってできない」
「だったら、怜未が蒼空の別人格だっていう確証はないってことですよね?」
「そうなのかもしれない。しかし、一番現実的な考え方だと思うよ。怜未の魂が、蒼空に宿ったと考えるよりは、遥かにね……」
「っ……」
「僕も歯がゆいのさ。僕自身、精神科医としての経験はまだ浅い。それでも、蒼空の助けになりたい。そう思って蒼空の側にいることを選んだ」
「蒼空には、どう説明しているんですか?」
そう訊くと、誠二さんは深いため息をつく。
「蒼空は本当に、怜未が自分の中で生きていると信じている。だから、彼女に僕の考えは話していない。蒼空の精神を動揺させることになりかねないからね。だから、僕が現在、その話をしているのは交代人格である怜未の方だけ……」
「では、怜未は……その話を聞いて……?」
誠二さんは、コクリと頷いた。
「怜未は蒼空の将来を案じている。はっきりと口に出したことはないが、このままでいいとは思ってないだろう。だから、怜未は僕の処に通い治療を受けようとしている。つまり、自分を交代人格であることを認めつつある――と、僕は感じているけどね」
「仮にそうだとして……それでこの先、どうなると言うんですか?」
「解離性同一性障害――その治療の答えの一つに『統合』というのがある。つまり、至極端的に言えば感情を一つにするということ。しかし、それを急ぐことは必ずしも正解ではない。多くの場合、交代人格にあっては己が消えることを恐れることになるから――だが」
「だったら、怜未が蒼空の別人格だっていう確証はないってことですよね?」
「そうなのかもしれない。しかし、一番現実的な考え方だと思うよ。怜未の魂が、蒼空に宿ったと考えるよりは、遥かにね……」
「っ……」
「僕も歯がゆいのさ。僕自身、精神科医としての経験はまだ浅い。それでも、蒼空の助けになりたい。そう思って蒼空の側にいることを選んだ」
「蒼空には、どう説明しているんですか?」
そう訊くと、誠二さんは深いため息をつく。
「蒼空は本当に、怜未が自分の中で生きていると信じている。だから、彼女に僕の考えは話していない。蒼空の精神を動揺させることになりかねないからね。だから、僕が現在、その話をしているのは交代人格である怜未の方だけ……」
「では、怜未は……その話を聞いて……?」
誠二さんは、コクリと頷いた。
「怜未は蒼空の将来を案じている。はっきりと口に出したことはないが、このままでいいとは思ってないだろう。だから、怜未は僕の処に通い治療を受けようとしている。つまり、自分を交代人格であることを認めつつある――と、僕は感じているけどね」
「仮にそうだとして……それでこの先、どうなると言うんですか?」
「解離性同一性障害――その治療の答えの一つに『統合』というのがある。つまり、至極端的に言えば感情を一つにするということ。しかし、それを急ぐことは必ずしも正解ではない。多くの場合、交代人格にあっては己が消えることを恐れることになるから――だが」
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