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その恋を残して

第5章 それは、おとぎ話だ

 誠二さんはそこで言葉を切り、少し沈んだ声のトーンでこう続けた。

「怜未の場合――もしかしたら自分が消えることを、寧ろ望んでいるのかもしれないな……」

「そ、そんな……」

 怜未の知られざる想いに触れた気がして、俺は言葉を失う思いだった。

 誠二さんはテーブルに置かれたコーヒーを口にする。そして、暫く間を置いてから、こう言った。

「僕の義妹(いもうと)に近づくな」

「は――?」

 あまりの唐突さに俺がキョトンとするのを、誠二さんは愉快そうに眺めている。

「失礼。一度、言ってみたかったのさ。まあ、割と本音だけどね」

 誠二さんは意味ありげに、そんな風に言ってから――

「だが、君は既に蒼空と関わってしまったようだ。沢渡さんが、その話を聞かせるくらいだから。つまり、そうなった以上は蒼空の支えになるべく協力をしてほしい。彼女の精神はデリケートだ。なるべく、波風を立てないように接することを望みたい」

「もちろん、俺は蒼空を支えたいと思ってます。だけど――」

「だけど――なんだい?」

「怜未の……ことは?」

 その時、誠二さんは、再び厳しい表情に変わる。

「この先、君は怜未に関わらないでくれ。おそらく怜未も、それを望んではいまい」

「でも――」

「いいね」

「……」

 口にしようとした言葉を、誠二さんの医師としての迫力に制され――。

 今の俺には、それ以上に抗う術もなくて、静かに俯くことしかできなかった。

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