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その恋を残して

第6章 ここにいるよ

 普通――って?


 当たり前のように使った言葉に、俺自身が引っかかっていた。これが『普通の恋愛』でないとするならば、なにをもって普通だと言うつもりなのだろうか。

 たぶん答えはない。

 確かに蒼空と怜未には特別な事情がある。だが、だからこそ俺は『普通の恋愛』をしなければ、ならないのでは――?

 自分でもなにを言いたいのか、よく理解していない。でも、その考えは正しいような気がしていた。だから――

「なあ――」

 と、田口の背中をつつく。

「なんだよ」

 面倒そうに顔を向けた田口に、言う。

「あのさ――ちょっとだけ、気まずくなって話しずらい時に――お前だったら、どうする?」

 そう訊かれた田口は暫く、面食らったような顔をしていたけど――

「仕方ねえな。アドバイスしてやるよ」

 ふっと笑って、そう言った。

「で――どんな状況なんだ?」

「だぶん、今は話しかけても無視されると思う」

「お前、なにしたんだよ?」

「それは、聞かないでくれ……」

 ウーン――と、田口は暫し考えてから、

「そんな時は、イベント発動じゃね?」

「イベント?」

「ちょっとした事件的なさ。要は話をするきっかけになれば、なんでもいいってこと」

「きっかけ……か」

 田口の言ったことも、なるほどと思わないわけではなかった。だけど急にそう言われても、いわゆるイベント事なんてすぐには思い当らない。

 例えば今日が偶然、彼女たちの誕生日であるとか、そんなことでもない限り――(そう言えば、俺は二人の誕生日もまだ知らないのだ)。

 それじゃあ自分から無理にでも、なにかきっかけとなる事件的なことを起こす、とか? イヤイヤ、無駄にハードルが高くなる上に、失敗すれば逆効果となってしまいかねない。

 ウーン、なにか偶発的に発生しないものかな――イベント。

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