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その恋を残して

第6章 ここにいるよ

「ゴメン……確かに迂闊だ。これからは気をつけるよ」

 今は『怜未』であっても、この学校にあっては常に『蒼空』でなくてはいけない。それは他者に知られてはならない、彼女たち二人との秘密だ。

 怜未の言葉はそんな意味での忠告だろう、と。そう思ったのは、どうやら勘違いだったようで。

「迂闊だとか、そういう問題じゃない」

 やや苛立ったようにして、怜未は俺に迫った。

「じゃあ?」

「松名くんが守るのは、いつだって蒼空なの。蒼空が眠っている間でも、それは同じことだよ。守るべきものは、大事な蒼空の身体なの!」

 怜未は肩をいからせながら、そう言いきった。

「……」

 その迫力に押され、俺は唖然とその姿を見つめる。そうしていると、コンビニの前で怜未が言った言葉が、自然と思い起こされてきた。

 危ういところで車を避けた時に『蒼空を守ってくれて、ありがとう』と、怜未はそう言ったのだ。

 蒼空の身体を共有していることに、怜未はある種の引け目を感じている。それは間違いないことだろうと、今になって確信に至った。

「私はね……今こうしている、この私は……もしかすると、怜未でもなんでもないかもしれないんだ……」

 怜未は打って変わって力を無くすと、ポツリポツリとそう言葉を続けた。

「アハハ……変なこと言うな、とか思ってるんでしょ?」

 自嘲気味に笑いながらそう訊く怜未に、俺は静かに告げる。

「そんなことはない。実は俺も、聞いていることがあるんだ」

「えっ?」

「ゴメン……この前、怜未が診療所から出てくるのを偶然に見かけたんだ。どうしても気になって、後でその診療所を訪ねたら、そこの先生と会って――」

「先生って……じゃあ?」

「うん……俺、誠二さんから話を聞いた」

「そう、お義兄さんから……」

「勝手なことをして、悪かったって思うよ……」

 俺がそう謝ると、怜未は静かに頭を振った。

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