I・I・NA・RI
第1章 二人の秘密
大きく痙攣する菜乃。
「………………イッちゃった。」
体が熱い。ずっと丈太郎との余韻に浸りたい。
菜乃は心地よい疲れの中に身を置いた。
しばらくしてからタオルケットを体に巻き付ける。
柔らかで落ち着く肌触り。
「丈さんでイッたよ…。」
菜乃は呟くと軽い眠気に落ちた。
ーーー津久見菜乃、17歳。高校3年生。
隣人で同級生の野神青斗の父、野神丈太郎に
恋している。
同級生の父といっても、自分や友人達との父親とは
全然違う。
引き締まって筋肉質な体。低く甘く優しい声。
切れ長でクールな瞳、綺麗な肌。整った顔立ち。
長身で長い手足。
菜乃が幼い頃は優しい隣の家のお父さん。
いつからだろう。
彼を男性として意識するようになったのは。
そしてやっと想いが通じたのはーーー。
しかし普通の恋人とは違う。
丈太郎は菜乃へ愛情を注いでいるが、それはまた
独特の愛だった。
いつの間にか寝息をたてる。
なかなか二人だけの時間を持てない菜乃にとって
今日は少し物足りないけど満ち足りた時間だった。
丈太郎の長い指、囁く甘い声。
菜乃は夢をみていた。