I・I・NA・RI
第2章 痴漢にご注意
もうすぐバスが来る。
朝のバス停。光台噴水公園前。
〈ぁ…!〉
丈太郎がバス待ちの列の3人後ろに並んだ。
〈昨日のLINE…。〉
そう、丈太郎からのLINEが気になっていた。
「朝のバスで菜乃の後ろにピッタリ付いて乗るよ。」
朝のバスは毎日混んでいてまず座れない。
〈今日も人でいっぱいかな…。〉
〈でも、丈さんは3人も後ろだけど…。〉
落ち着かない気持ちでいるとバスがやって来た。
〈あっ、今日も混んでるなぁ…。〉
バスのドアが開き、乗り込む。
菜乃が降りるバス停は4つ先だ。
〈ぁ………。〉
いつの間にか丈太郎が菜乃の後ろにいた。
乗客を乗せバスが走り出した。
走り出してすぐ異変に気付く。
車体の揺れに合わせ人に押されながらも、丈太郎の
手が後ろから菜乃の太腿辺りに当たっている。
〈丈さん…。〉
菜乃の髪に丈太郎の息づかいを感じる。
〈近い…。〉
菜乃の背後にピッタリと体を合わせている。
菜乃は丈太郎を意識して自分がじっとりと汗ばむのを
感じた。
進むにつれ大きく揺れるバスの車体。
〈丈さん…!〉