I・I・NA・RI
第2章 痴漢にご注意
今では立っていることで精一杯だった。
なんとか手すりを掴む。掴む手に力が入る。
〈ずっとこのまま…?〉
男は菜乃の胸に執着しているようだった。
何日も何十日も。何百日も…?
きっと菜乃を目で追っていたのだろう。
抑圧された性癖、性欲、欲望を菜乃にぶつけている。
執拗に、執拗に…。菜乃の乳首をもてあそぶことに
歓びを感じているようだった。
〈うぅ…。〉
男への嫌悪感には変わりがないが身体的な刺激に
どうしても逆らうことが出来ない。
気持ち良い?いや、そうではない。
本当に感じてない?いや、それは…
〈あっ…!〉
菜乃は自分から何か漏れ出たのを感じた。
じわぁ…と、下着を濡らしたのを感じ驚いた。
後ろの男に気付かれないようにしなければ…。
〈ふうっ…。〉
右乳首と左乳首を男の親指と人差し指が自由に転がす。
指先の力に強弱をつけ、菜乃の固くなった乳首を
好きに愛撫している。
混雑時の電車内。
誰も社内の片隅で行われている卑劣な痴漢行為に
気付く者は居なかった。