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【new】淋しがり屋のドロップス

第3章 全ては君のために

僕の話も遮ってイッチャンはドアを勢い良く閉め一旦、エントランスのシャッターを下ろし、今度は僕の方のドアを開けた。

「え、じ、自分で、歩ける!」
「俺がしたいの。大人しくしないと落ちるよ」

僕はイッチャンの前ではいつでも子供扱いだ。こんな些細な事でも僕を甘やかす。
もう、子供じゃないのに。凄くくすぐったい。

「母さん、母さん?」

家に入ると急に大きな声を出して久枝さんを呼んだ。

「なんえ、大きな声出してみっともな…まぁ、夜空?どうしたん?」

抱えられた僕をイッチャンのお母さんの久枝さんが見て驚いた。
なんか、もぅ恥ずかしい。

「夜空、学校で頭怪我して救急車で運ばれたんだ」
「ええっ!大丈夫なん?まぁまぁまぁ、ゆっくりしときなさい。」
「でも、みんな」
「何、いうてはりますのん。うちが向こう行きます。
あんたの頑張りはちゃんとみていましたんえ、大丈夫やから
ゆっくり休み!その間、何かあったら好きなだけ壱会使いなさい」
「ほら、だから、ね。」
「あ、有り難う。久枝さん、イッチャン」

久枝さんは家柄からか、作法にも凄く厳しく、とても肝っ玉が座った人だ。
華道の先生としても人気があり、日本だけではなく、海外でも活躍している。
お弟子さんだって沢山かかえるのに、家事、育児にも手を抜かない。そんな久枝さんに僕たち兄弟も大分お世話になったのだ。

「久しぶりに双子をぶん殴れますわ」

それにとても力強い。多分、僕よりずっと心も体も強い。

「母さんも張り切ってることだし、部屋行こうか」

漸く下ろしてもらえたのはイッチャンのベッドの上だった。

「ごめんね、仕事終わったら布団敷くから帰ってくるまで我慢ね」
「うん」
「……?夜空」
「え?あ、ごめん」

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