テキストサイズ

【new】淋しがり屋のドロップス

第2章 行方不明にご注意

「辛くなったらおいで…和菓子と抹茶は用意できるから」

そうイッチャンは僕に伝えてお別れをした。

「変なの……どうしてそんな風に言うの……かな」

イッチャンとうちの兄弟は家族同然で一緒に育った。
イッチャンの両親もうちとなんら変わらず忙しいく、どうやら気の合う両家で同盟を組んだらしい。
家庭教育もシェアしてる感じで、親が二人づついるみたいだった。悪いことしたら全力で親の誰かに怒られるし、誉められるときは四倍だった。

「心配なの。頑張りやさんだからね、夜空は」
「そんなことない」

同じ環境で育ったのに凄く不思議。
遺伝子って神秘だと思う。日向みたいに大きくなった子もいれば、双子の様に乱暴になったり、それでも
イッチャンは小さい頃となんら変わらず良く面倒を見てくれている。
大好きな兄の一人だ。
仕事をしてるから忙しいのに、僕を見つけたらこうやって、手伝ってくれる。

僕はイッチャンの好意を無駄にしてはならないので今日の夕飯分のロールキャベツとカボチャのサラダの材料を買いに急いだ。

なのに…

「何で今日に限って誰も帰ってこないんだ!!!」

ご丁寧に長男は置き手紙に綴ってあり、何やら懇親会らしく、双子の空は遊びに、日向は珍しく稽古が長引いているらしい。

完璧に作り上げたロールキャベツも
ポトフも、カボチャサラダも綺麗にテーブルに並べてはなんだか今日は凄く疲れていて、切なくなった。

猫のミータン、ヒータンもどうやら遊びに行ってるらしい。

急に世界中で今、生きてるのは自分だけなんじゃないかと思えてきた。
兄弟五人居ても充分広い家だから余計広く思えるんだ。
普通の高校生って、何してるんだろう。
何だか馬鹿馬鹿しくなる。
自分の空っぽさというか、家事意外やることなくなると何も考えられなくなるんだ。

「はぁ…奏と合コンでも行けば良かったなぁ…でも、恋人とか大変そうで面倒臭そう」

両親の長期海外勤務が決まったのは三年前。
当時、小学六年生だった僕は、兄弟の誰より、お手伝いさんのお手伝いをしていたし、
日向の面倒をみていたので、自分のやるべきことを見つけて嬉しかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ