テキストサイズ

【new】淋しがり屋のドロップス

第2章 行方不明にご注意

その時お世話になったお手伝いさんも家事のできない両親と一緒に海外へ連れていかれたし、
それ以来、近衛家の家事は僕の仕事となった。

「よ…ら?」

長男、双子、日向はみんな長身美形で何かしら秀でるものを持っているのに、僕だけ普通なのが少しだけコンプレックスで、
でも、そんな完璧なみんなが僕のご飯美味しいって食べてくれるのが凄く嬉しかった。
何でだろう、求めていた事は全て叶ってるし、何も問題ないのに…なんで

「夜空?」
「……あれ?日向?…グズ」
「夜空何で泣いてるの?」
「グズ…泣いてなん…あれ?何でもないよ」

日向が凄く心配そうに此方を伺い、まるで子犬みたいな顔をしている。

「ふふ、何でもないよ、日向、おかえり」
「ねぇ、何で泣いてるの?」
「変な夢見てただけだよ心配しないで」

日向が何時ものようにすりよって首に軽く唇を落とす。
ただのじゃれあいもコミュニケーションみたいで嬉しい。
日向がこんな風に慰めてくれるのが、温かく感じる。

「じゃ、夕方何でイッチャンの車乗ってたの?」
「あぁ見てたんだ、買い物付き合ってくれただけ」

抱き締める腕がぎゅっと強くなる。
何だか力強くて日向の不安が僕にまで伝わってきた。
そんなに心配すること無いのに。

「どうしたの?大丈夫だよ。何もないよ?」
「ねぇ、前から思ってたけど、夜空、イッチャンが好きなの?」

唐突に何を言い出したかと思えば、焼きもちを妬かれ少しだけ笑ってしまった。
別に馬鹿にした訳じゃないけど、何となくまた抱き締める腕が強くなった気がする。

「好きだよ」
「……」
「あーちゃんも、青空も、日向もイッチャンも皆大好き」

漸く、きつく締まった腕が緩んでほっとした所に隙をつかれた。

「んっ、」

何をされたのかは一瞬でわかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ